いびきは病気のサインかも?睡眠時無呼吸症候群の原因・治療法と歯科でできるスリープスプリントについて
「家族から、いびきがうるさいと言われる」 「寝ているときに呼吸が止まっていると指摘された」 「しっかり寝ているはずなのに、日中に眠くなる」
このようなお悩みはありませんか?
いびきは、単に睡眠中の音が大きいというだけの問題ではありません。場合によっては、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)という病気が隠れている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりすることで、睡眠の質が低下する病気です。日中の強い眠気や集中力の低下だけでなく、高血圧や心臓・血管の病気などとの関連も知られています。
この病気の治療には、内科や睡眠専門の医療機関などで行う検査・治療に加え、歯科で作製する「スリープスプリント」と呼ばれるマウスピースを用いた治療もあります。
あらかわ歯科医院でも、医科と連携したスリープスプリントの作製に対応しています。
今回は、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因、放置するリスク、医科での検査・治療、そして歯科でできる治療について、わかりやすく解説します。
1.そもそも「いびき」とは?

いびきとは、睡眠中に空気が鼻や喉を通る際、狭くなった気道の周囲の組織が振動することで発生する音です。

通常、起きているときは喉の周囲の筋肉が気道を支えています。しかし、眠ると筋肉が緩むため、舌や喉の周囲の組織が気道側に寄り、空気の通り道が狭くなることがあります。
その狭くなった部分を空気が通過すると、周囲の組織が振動し、いびきが発生します。
いびきは、飲酒や疲労、鼻づまりなどによって一時的に生じることもあります。一方で、毎晩のように大きないびきをかく場合や、睡眠中に呼吸が止まる様子が見られる場合は注意が必要です。
特に、いびきの途中で音が止まり、その後に大きな呼吸音やあえぐような息継ぎが見られる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
ただし、いびきの音だけで病気の有無や重症度を判断することはできません。気になる症状がある場合は、医療機関で相談することが大切です。
2.睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、弱くなったりする病気です。
一般的に、呼吸が10秒以上止まる状態を「無呼吸」と呼びます。また、呼吸が完全には止まらなくても、空気の流れが大きく減少する状態を「低呼吸」と呼びます。
これらが睡眠中に繰り返されると、体内の酸素が不足したり、睡眠がたびたび妨げられたりします。
本人は眠っているため、呼吸が止まっていることや睡眠が分断されていることに気づかない場合も少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群には種類がある

睡眠時無呼吸症候群は、主に次のように分類されます。
① 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
睡眠中に舌や喉の周囲の組織などが気道を塞いだり、狭くしたりすることで呼吸が妨げられるタイプです。睡眠時無呼吸症候群の中で代表的なものです。
② 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
脳から呼吸筋への指令が適切に伝わらなくなるなど、呼吸を調節する仕組みに問題が生じるタイプです。心臓の病気などが関連する場合もあり、閉塞性とは原因や治療方針が異なります。
このように、睡眠時無呼吸症候群といっても、すべての方で同じ原因があるわけではありません。適切な治療を選ぶためには、まず検査によって種類や重症度を確認する必要があります。
3.いびき・睡眠時無呼吸症候群が起こる原因
閉塞性睡眠時無呼吸症候群には、さまざまな要因が関係しています。
① 肥満や首周りの脂肪
首や喉の周囲に脂肪が蓄積すると、気道が狭くなりやすくなります。そのため、肥満は睡眠時無呼吸症候群の代表的なリスク因子です。
ただし、痩せている方でも睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
② 顎が小さい・下顎が後退している
顎の大きさや位置も、気道の広さに影響します。
下顎が小さい方や、下顎が後方に位置している方では、舌の付け根などが喉の奥に寄りやすく、睡眠中に気道が狭くなる場合があります。
このような顎や顔面の形態は、歯科で行うスリープスプリント治療とも関係する重要なポイントです。
③ 舌が大きい・扁桃が大きい
舌が大きい方や、扁桃が肥大している方では、睡眠中に気道が狭くなることがあります。
特に子どもの睡眠時無呼吸症候群では、アデノイドや口蓋扁桃の肥大が原因となっている場合があります。
④ 鼻づまりや鼻の病気
アレルギー性鼻炎や鼻中隔の形態異常などによって鼻の通りが悪くなると、睡眠中の呼吸に影響することがあります。
⑤ 飲酒や睡眠中の筋肉の緩み
アルコールは喉の周囲の筋肉を緩め、いびきや無呼吸を悪化させる場合があります。
このほか、仰向けで寝ると舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、症状が悪化する方もいます。
睡眠時無呼吸症候群は、これらの要因が複数重なって発症することもあります。
4.睡眠時無呼吸症候群を放置するとどうなる?

睡眠時無呼吸症候群で問題となるのは、単に睡眠の質が悪くなることだけではありません。
日中の眠気や集中力の低下
夜間に呼吸が繰り返し妨げられると、十分に眠ったつもりでも疲れが取れず、日中に強い眠気を感じることがあります。
また、集中力や判断力が低下し、仕事や日常生活に影響する場合もあります。
特に注意したいのが、居眠り運転です。運転中に眠気を感じる場合は、無理に運転を続けず、安全を確保してください。
高血圧や心血管疾患との関連
睡眠中に呼吸が止まると、酸素不足や身体への負担が繰り返されます。
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、不整脈、心臓病、脳卒中などのリスクとの関連が知られています。
もちろん、いびきがある方すべてがこれらの病気になるわけではありません。しかし、睡眠中の呼吸障害が疑われる場合は、放置せずに検査を受けることが重要です。
5.睡眠時無呼吸症候群の検査・診断はどこで受ける?

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、呼吸器内科、睡眠専門外来などの医療機関で相談します。症状や地域の医療体制によっては、耳鼻咽喉科などが窓口となることもあります。
検査では、問診や睡眠中の呼吸状態を調べる検査などを行います。
簡易検査
自宅で機器を装着し、睡眠中の呼吸や血液中の酸素の状態などを調べる検査です。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
睡眠中の呼吸、酸素の状態、脳波、心拍などを測定し、睡眠と呼吸の状態を詳しく調べる検査です。実施方法は医療機関や患者さんの状態によって異なります。
検査では、無呼吸や低呼吸が1時間あたり何回起こるかを示す「AHI(無呼吸低呼吸指数)」などが評価されます。
一般に、成人ではAHIが5以上で、関連する症状などを伴う場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。AHIの値だけでなく、症状や合併症、検査結果全体を踏まえて治療方針が決まります。
重要なのは、歯科でいびきの相談をするだけでは、睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度の判定はできないということです。
まずは医科で適切な検査を受け、どのような治療が必要かを判断してもらいましょう。
6.医科で行う睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療は、原因や重症度、症状、合併症などに応じて選択されます。
① CPAP(シーパップ)療法
CPAPは、睡眠中に鼻などに装着したマスクから空気を送り、気道が塞がらないようにする治療法です。
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群などで、中心的な治療法として用いられています。
CPAPには、睡眠中の無呼吸を抑える効果が期待できます。一方で、睡眠中にマスクを装着する必要があるため、装着感や鼻の乾燥などが気になる方もいます。
② 生活習慣の改善
肥満がある場合には、適切な減量によって症状が改善することがあります。
また、飲酒を控える、規則正しい睡眠を心がける、症状によっては横向きで寝るなど、生活習慣の見直しも大切です。
ただし、生活習慣の改善だけで十分とは限りません。自己判断で医療機関の治療を中断しないようにしましょう。
③ 手術などによる治療
扁桃の肥大や鼻の病気など、気道を狭くする原因が明らかな場合には、状態に応じて手術などが検討されることもあります。
このように、医科では検査結果に基づき、患者さんごとに適した治療方針を決定します。
7.歯科でできる治療「スリープスプリント」とは?

睡眠時無呼吸症候群の治療には、歯科で作製する「スリープスプリント」と呼ばれる口腔内装置を使用する方法があります。
これは、睡眠中に歯に装着するマウスピース型の装置です。
一般的なスリープスプリントは、上下の歯に装着し、下顎を通常よりも前方に誘導・保持する構造になっています。
下顎を前方に移動させることで、舌の付け根や周囲の組織が喉の奥に落ち込みにくくなり、気道を広げる効果が期待できます。
スリープスプリントのメリット
- 比較的小型で、旅行や出張にも持ち運びやすい
- CPAPのような機械やホースを必要としない
- 適応となる方では、睡眠中の無呼吸やいびきの改善が期待できる
ただし、すべての患者さんに同じ効果が得られるわけではありません。特に重症の方ではCPAPが優先されることもあり、スリープスプリントが適しているかどうかは医師による評価が必要です。
スリープスプリントは誰でも作れるの?
スリープスプリントは、単にいびきを軽減するためだけの市販マウスピースとは異なります。
睡眠時無呼吸症候群の治療として使用する場合は、医科での検査・診断を受け、歯科での作製が適切かどうかを判断する必要があります。
また、歯の本数や歯周病の状態、顎関節の状態などによっては、装置の使用が難しい場合もあります。
そのため、歯科ではお口の中の状態を確認し、装置を安全に使用できるかどうかを評価したうえで作製を進めます。
8.スリープスプリントを作製するには、内科など医科の紹介が必要?
睡眠時無呼吸症候群の治療として、健康保険を利用してスリープスプリントを作製する場合は、原則として医科での診断と、医師からの診療情報提供が必要です。
一般的な流れは次のとおりです。
ステップ1:医科を受診する
いびきや睡眠中の呼吸停止、日中の眠気などが気になる場合は、呼吸器内科や睡眠専門外来などを受診します。
ステップ2:検査を受け、診断してもらう
医師の判断に基づき、簡易検査や睡眠ポリグラフ検査などを受けます。検査結果から睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を評価します。
ステップ3:スリープスプリントが適切か判断する
診断結果や症状に応じて、医師がスリープスプリントによる治療が適切かどうかを判断します。
ステップ4:紹介を受けて歯科を受診する
歯科での作製が適切と判断された場合、医師からの診療情報提供を受けて歯科を受診します。歯科では歯や歯ぐき、顎関節などを確認し、装置を作製します。
ステップ5:装置を調整し、治療効果を確認する
完成した装置を装着し、必要に応じて調整を行います。装置を作製しただけで治療が完了するわけではなく、医科での経過観察や、必要に応じた治療効果の確認も大切です。
なお、保険適用の条件や必要な書類は診断内容や制度上の要件によって異なります。医科で診断を受けていない場合や、単なるいびきに対して装置を作製する場合などは、自費診療となることがあります。受診前に医科・歯科へ確認すると安心です。
9.あらかわ歯科医院でもスリープスプリントの作製に対応しています

あらかわ歯科医院では、睡眠時無呼吸症候群に対するスリープスプリントの作製に対応しています。
ただし、歯科でできることは、主にお口の状態を確認したうえで、適切な口腔内装置を作製・調整することです。睡眠時無呼吸症候群そのものの診断や、CPAPなどの治療方針の決定は医科が担います。
そのため、当院でスリープスプリントの作製を希望される方には、まず医科で検査・診断を受けていただき、医師からの紹介・診療情報提供に基づいて対応する流れをご案内します。
また、装置を作製する前には、歯の本数や歯周病の状態、顎関節などを確認します。お口の状態によっては、装置の使用が適さない場合もあります。
「家族からいびきを指摘されている」 「睡眠中に呼吸が止まっていると言われた」 「睡眠時無呼吸症候群と診断され、マウスピース治療を検討している」
このようなお悩みがある方は、まずは医科での検査・診断をご検討ください。すでに診断を受けている方は、紹介状などの必要書類について当院へお問い合わせください。
10.いびき・睡眠時無呼吸症候群に関するよくある質問
Q.いびきがあれば、必ず睡眠時無呼吸症候群ですか?
いいえ。いびきは、飲酒や鼻づまりなどによって一時的に生じることもあります。ただし、大きないびきが続く、睡眠中に呼吸が止まる、日中に強い眠気があるといった場合は、医療機関での検査をおすすめします。
Q.痩せていれば、睡眠時無呼吸症候群にはなりませんか?
いいえ。肥満はリスク因子の一つですが、顎の形態や舌の大きさ、扁桃の肥大などが原因となることもあるため、痩せている方でも発症する可能性があります。
Q.スリープスプリントを作れば、CPAPは不要になりますか?
必ずしもそうではありません。治療方法は、睡眠時無呼吸症候群の重症度や合併症、症状などによって異なります。自己判断でCPAPを中断せず、担当医に相談してください。
Q.歯科だけでスリープスプリントを作れますか?
睡眠時無呼吸症候群の治療として保険適用で作製する場合は、原則として医科での検査・診断と医師からの診療情報提供が必要です。まずは医科を受診し、歯科での装置作製が適切かどうかを判断してもらいましょう。
Q.市販のいびき対策用マウスピースでもよいですか?
市販品と歯科で作製するスリープスプリントは、適合性や調整方法などが異なります。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、市販品だけで対処しようとせず、医療機関で検査を受けることが大切です。
まとめ|いびきを軽く考えず、医科と歯科で適切な治療を
いびきは誰にでも起こり得ますが、毎晩のように続く大きないびきや、睡眠中の呼吸停止は、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、日中の眠気や集中力の低下だけでなく、高血圧や心血管疾患などとの関連も問題となります。
気になる症状がある場合は、まず医科で検査・診断を受け、適切な治療につなげましょう。
治療にはCPAP療法や生活習慣の改善などがあり、患者さんの状態によっては、歯科で作製するスリープスプリントが選択肢となります。
スリープスプリントは、医科と歯科が連携して取り組む治療です。 歯科では、お口の状態に合った装置の作製・調整を通じて、睡眠時無呼吸症候群の治療をサポートします。
あらかわ歯科医院でもスリープスプリントの作製に対応しています。いびきや睡眠中の呼吸についてお悩みの方、医科で睡眠時無呼吸症候群と診断され、マウスピース治療を検討されている方は、ぜひご相談ください。
質の良い睡眠は、日々の健康を支える大切な要素です。いびきを単なる癖として片付けず、ご自身の睡眠と健康を見直すきっかけにしてみましょう。




